【初心者向け】年俸制を企業が導入するメリットとリスクについて解説

こんにちは、仁井です。
普段は転職エージェントとして働いています。

たまに、「年俸制」の会社を見かけるな。
年俸制は、どんな企業が導入しているんだろう。
導入すると、何かいいことあるの?
こんな疑問を解決する記事を作りました。
年俸制を導入する企業は増えているので、背景やメリデメを押さえておきたいですね。
記事の内容
年俸制の歴史と、導入のメリデメを企業目線で解説する
記事の信頼性
年俸制の企業への転職支援も、幾度となく経験してきました。
読者さんへの前書きメッセージ

年俸制は企業ごとに特殊ルールもあるから、一概に良いとも言えないんだよなあ。
でも「年俸制は怖いものだから」と遠ざける人が損しているシーンも見かけるぞ。
こんなことを思いました。そもそも年俸制って何?という方にもご参考いただければ幸いです。
記事を読み終えると、年俸制を導入する企業側の心理と活用方法が分かります。
それでは、さっそく見ていきましょう。
年収と年俸の違いを解説する
年俸制とは、1年単位で給与を算出する給与体系のことです。
年間の奉仕レベルが、来年度の収入を決める制度とお考えください。
私たちに馴染みのある”年収”とは、主に”月給制でもらう給料”を指しています。
月給制と年俸制の違いは、「年間の収入が把握できるかどうか」にあります。
- 年俸制:年単位で給与が決定。(成果主義っぽい)
- 月給制:月単位で給与が決定。(勤続年数や年功序列を重視する傾向)
どちらにも良し悪しがありますので、後述します。
年俸制の歴史【導入企業は増えている】
年俸制は1990年代から日本で導入され始めました。
約30年の間に、年俸制は様々な企業、多様な労働者に対して導入が進んでいます。
- 大手企業
- 役職者の採用
- 流行りのITベンチャー
各所で年俸制の採用事例が増えています。
参考文献:
荻原 祐二(2017). 日本における成果主義制度導入状況の経時的変化. Studies in Science and Technology, Volume 6, Number 2, 2017
http://www.union-services.com/sst/sst%20data/6_149.pdf
年俸制の導入メリット【企業視点】

なんで、わざわざ月給じゃなくて年俸制にするんだろう?
こんな疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
企業にとって年俸制を導入するメリットはいくつかあるのですが、抜粋して3つ紹介します。
年俸制の導入メリット(企業目線)
- 経営計画を立てやすい
- 社員をモチベートしやすい
- 「働かないおじさん」を切りやすい
それぞれ、解説していきますね。
メリット①:経営計画を立てやすい
年俸制は、月給制より人件費が予測しやすいです。
固定費が予測できる状況の方が、単純に会社運営が行いやすいんですよね。
会社にとって人件費は、私たちの生活で言えば光熱費のようなものです。
電気代が1000円なのか2万円なのか分からない状況だと、飲み会や趣味に使えるお金に不安が出てきますよね。
メリット②:社員をモチベートしやすい
年俸制は自分の頑張りが給料に反映されやすい傾向にあります。
従業員はスポーツ選手のように「この1年間でしっかり結果を出して、翌年度の年俸を上げてやるぞ!」と意気込んで頑張ります。
会社的には「メンバーのモチベーションを上げるために多くの時間を割かなくても、年俸制がその役割を一定担ってくれる」という状況を作れるわけです。

同僚のAさん、年俸上がったのか。
なら私も頑張ればそこそこイケるんじゃない・・?
このような刺激が生まれやすい制度でもありますね。実力主義で健全な運営です。
メリット③:”働かないおじさん”を切りやすい
- 部下が働いている様子を眺めて
- 特段有益なアドバイスもせず、座っているだけなのに
- 部下の何倍も給料を貰っている
こんな存在を”働かないおじさん”と呼んだりします。

昔はよく働く好青年だった方も、何かのきっかけで変わります。
しかし、月給制では安易に社員の年収を下げたりクビにできません。
年俸制はシンプルに「今年度の成果=翌年度の年俸」になるので、生産性の低い社員は居心地が悪くなります。
余談:リモート運営でも邪魔になる”働かないおじさん”
新しい生活様式になり、リモート運営に切り替える企業も増えてきました。
そこでも、働かないおじさんは問題視されているようですね。(参考記事:ダイヤモンドオンライン)
年俸制の導入リスク【オイシイ話ばかりじゃない】

いい話ばかりだけど、企業にデメリットもあるでしょう?
やはりオイシイ話ばかりではありません。良し悪しどちらも知っておきたいところですね。
年俸制の導入リスク(企業目線)
- 年度内は支払額を変えられない
- 年俸の大幅減額は難しい
- 契約を結んでいくのが面倒臭い
それぞれ解説していきます。
リスク①:年度内は支払額を変えられない
基本的に定めた期間内は、人件費を変えられないのが年俸制の特徴です。
支出が予測できることはメリットですが、同時にリスクにもなり得ます。
よくあるトラブル事例
- 高い年俸で雇った社員が、実はめちゃくちゃサボる奴だったので期待してた成果が出ない。
- 社員がクライアントを怒らせて、巨額の損失を会社に与えた。
こんなことがあっても、年俸額はすぐに変えられないわけです。
トラブル回避のために
制度によって従業員のやる気UPを待つだけではナンセンスです。
企業としても従業員のスキル・モチベUPを狙って、施策を打ち出すことが望ましいですね。

資格やセミナーなど勉強系の福利厚生が充実している企業は、年俸制が多いように見受けられます。
リスク②:年俸の大幅減額は難しい
年俸は「労働条件」で定められるものです。
労働条件は、会社と従業員の双方合意によって決まります。
成果の出ない従業員がいたとして、企業が一方的に「生活権を脅かすほどの労働条件の不利益変更」は難しいです。

従業員にとっては、保険のようなルールですね。
従業員が”働かないおじさん”になっても、「年俸額をいきなり10%以上下げる」という対応は実際難しいものです。
働かないことへの抑止力にはなりますが、やはり労働基準法は従業員を守ります。
やたらな降給は出来ないということですね。(だからと言って、不真面目に働いてはいけませんよ!)
リスク③:契約を結んでいくのが面倒臭い
年俸制は従業員ごとに年俸が変わります。ぶっちゃけ、人事考課は月収制の方が楽に運営できたりしますね。
役職の有無によってみなし労働の区分も異なったりします。
個別対応が必要なので、人事やマネージャーは多忙です。
- 契約締結と更新のタイミングで、各社員に書類を作る
- 条件に納得してもらえるよう面談を実施する
- 承諾のサインを回収する
こんな対応が発生するので、どうしても手間がかかります。
いかがでしょう、企業側の苦悩もお分かりいただけましたか?
年俸制の企業で活躍しよう
今回は年俸制を企業目線で紐解きました。
年俸制の企業へ入社する際は、ご自身のメリデメだけでなく、企業側の視点も押さえて検討してみてください。
ちなみに、年俸制について従業員側のメリデメはこちらの記事で解説しています。
- 転職は当たり前になった
- 通勤が当たり前じゃなくなりつつある
- 数年かけて教育したり現場をローテさせる終身雇用的な運営は、企業としてもリスクが増大してる
こんな感じで、日本の働き方は徐々に変わっています。

フルコミッション(完全歩合制)と年俸制は違います。
少し成果が出なくても、いきなり生活が脅かされることは考えづらいです。
ご縁があれば、年俸制の企業への転職を考えてみても良いかもしれませんね。